―ブログ『土曜日には虹になる』様の感想―


2009.08に閉鎖されました。
過去ログを持っていましたので、当サイトにて公開しておきます。
一個人の趣味とはいえ、ここまで楽しんでなおかつ感動もしていただけたのなら、書き手としてありがたいかぎりです。 なんだかそのまま消滅してしまうのがもったいないような気がして、サイトの隅にひっそりと残しておきました。

 
もう好きすぎて何から語ればいいんだか(笑)もとより表現力がないので雰囲気を伝えるのは難しいんだが、とりあえず私はこの物語が非常に好きなのです。出会ったのはオンノベを読み始めて間がない頃。今回また通して再読して、やはりすごく好きだなとしみじみ。

以前、ご本人が「地味な話」だと仰ってたんですが、確かに派手な作品ではないと思う。展開そのものは波瀾万丈、では激しい起伏が文脈に感じられるかというと、そうではない。力及ばないものに足掻き、翻弄されてなお生きる、そんな物語。何に対してどんなふうに足掻くか、何に翻弄されるのか、招く結末はどんなものなのか、僅か鮮明なのは主人公であるユーリーだけれど、登場人物一人一人を丁寧に丁寧に描いてある、だからこれは「群像ドラマ」だと、最初に読んだときに感じました。此処で異質なものを持ち出すのはアレだが……私は外ドラ野郎なのでこれが一番表現しやすい、心惹かれる群像ドラマってのはド派手な物語にはならないのかも知れないなと。上手く言えないけど「染みる」んです、これ。

おっとりとした性分の主人公ユーリーを語り手に紡がれているからかな。彼自身、クールとか無感情とかじゃなく、感情の振れ幅が穏やかで激情に駆られることがないせいか、語り口調が淡々としている感じを受けます。その独特の振れ幅は常人では考えられない、なのに人間臭はしっかりある。オレグの特殊性を(これネタバレになるから書けないけど)和らげる条件のようなものがあるんだな。こうしてれば抑えられるよ、みたいな。でもこれ、ユーリー相手じゃ発動しないんじゃないのか、もしかして?(笑)

そもそもユーリーのベースって「諦め」のようなものなんだよな、当初。真っ直ぐと言ってしまうには風吹けば揺らぎ雨降れば濡れるキャラで、繊細と言うより鈍感で(笑)海綿のように周囲の波乱を吸収してしまうタチなんだが(影響されやすいんだな)そのくせ生き様は杉の樹木。そして穏やかに、緩やかに我が枝を剪定する、無意識に近い形で。

物語の冒頭で凍死する彼の親友オレグは、ユーリーとは真逆のようなキャラとして登場し、人並み外れた才を持つため「化け物」呼ばわりされるシーンが何度か出てくるんだけど、禍々しい意味ではない「怪物」と言えるのはユーリーの方なんだろうなと感じる。このキャラはだって、孤高の人だよ。変な例えだけど、カルメンが魔性の女なら、ユーリーって神性の男、タチは両極端だが多くの運命を惑わす力は似たようなもんだろう。それに惑うか惑わないかは触れる者の心ひとつ。

あくまで個人的な感覚で変だけど、この決して派手でない物語をぐいぐいと読み進められるのが、書かれてる早瀬さんの力なのか、ユーリーという語り手の力なのか、私にはもう判断がつかない(笑)

物語の展開はどうしようもなく痛いです。坂道を転げ落ちるようなハッキリ言って悲劇的展開で辛い。痛々しくて辛いんだけど強い。跳ね返す強さじゃなく傷つきながら噛み砕いて血肉にする強さはいっぱいいっぱいなのに逞しい。そうだ、逞しいんだな。痛くて、そして切ない。もう切なすぎて悶絶したわ、私。「夏の章 18」のラストではあまりに切なくて胸が痛んだよ、オレグ。この切なさはもう何処まで読んでも消えないから、少なくとも私は最後の最後まで切なかった。けど、こういうもんなんだろうとも思う。痛みは時間が癒すんだろうが、読んでる私はユーリーほどの時間を実際に経ていないからな。

主要キャラクター一覧を改めて眺めてるとホントに感慨深い。もしかすると結末は綺麗に過ぎるのかも知れないと思う気持ちと、だからどうした綺麗であれば全てが否なのかという気持ちが最後に残るな。私、トーシャが好きだったんだよなあ……(泣)これはこの作品に限ったことではないが、私は死した人間の過去、つまり生きていた頃の物語を読むのが非常に辛い。書くのも辛いんだが(笑)読むに厳しい。しかしまったく厳しくない方がむしろオカシイとは思うからね。

ちなみに特に好きなのは「冬の章」から「秋の章」。幕裏となっている「永遠の冬」は、本編(幕間を除く)はユーリー視点で進むので、描かれていない部分があって、その種明かし的な物語でもあるが(本編で描かれていないにしても読み取れる部分が多いので)これは最初に書かれてあるように本編とはまた別の「オレグとグリエフ」の物語として読むべきなんだろうな。オレグ視点だし。とはいえ逆に「ユーリーはほとんど登場しません。期待された方、すみません」とあるが、そんなことなかったもん! ユーリー好きにも充分美味しかったわ!

なんか結局ユーリーを語っているような気がするが(汗)でもユーリーの物語だから間違ってないよな……?

でもって「女子限定ゲーム」(またやってるよ、この人)あなたの理想の王子様は誰?

ユーリー・サラファノフでしたとも、ドンと来ーい!(←来ねーよ)
※管理人O様へ私信。もし不都合でしたら、こっそり私(早瀬)にお知らせくださいね。確認次第消去します。
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